〜2章 歌ってみたとは〜
歌ってみたとは、
歌コレを前にして、改めて歌ってみたとはなんだろうと自然と疑問が湧いて出てきた。
こうなると止まらない。
そもそも歌い手とは何なのか。
昨今はYouTuber化していたり、ボカロPも自分の曲を歌う時代。オマケにSynthesizerVも登場し、ますます歌い手という存在に疑問符がついた。
この時こそ、正解は見出せないままであったが、とにかく自分の中にあったのは機械の歌では表現しきれない生身の人の体温を曲にのせたいということであった。
リテイクの音源をアカヨウチュウさんに送り、しばらくするとラフのmix音源が届いた。
「何か気になるところがあったら言ってください」
的なことをメッセージしてくれたのだが、
相手はこの曲の原作者である。
原作者自らmixしている。
会ったことも話したこともろくにやりとりもしたことがない原作者様に対して、
気心知れたmix師さんにお願いするような、
「01:03 もっと薄めでお願いします」とか、そういう文面を送る度胸もなく、原作者を前にしてどこから目線で言うことなど僕には無理だった。
文字で伝えるの危険だ。
社会の荒波で鍛えられたサラリーマンの第六感がここで働いた。
僕は申し出る。
一度電話で話しをさせてもらいたいと。
正直、怖かった。
えらこっちゃだし。
この曲への想いや、1章で書いた内容はこの時アカヨウチュウさんは知らない。
mixどうのこうのの前に、僕の想いを打ち明けないと作品と向き合ううえでとても失礼ではないか。
結果。
いい大人の男2人が初見にも関わらず朝の3時まで電話でいちゃついていた。
(個人の感想です)
1章に書いた話しも当然したうえで、mixでお願いしたのは、ラスサビ前のところの言葉にならない音、ブレス感をある程度残してほしいということだけだった。
これは前述した機械の音との差別化として、人の体温を息づかいで現したいという思いだった。
(新米活動者とその歌仲間は自身の声がエッチと言われる可能性についてまだ気づかない)
Mix依頼中、原作者殿のXからは目が離せなくなった。
歌が下手クソとか、ストレスかかるとかそういう様子がないだろうかと、自分の声でほんとによかったのかな。
実際は特にそのような気配もなく「この曲は2人のために書いたものだったかと思うくらい」という趣旨のつぶやきを見つけときには、ありがたすきで膝から崩れ落ちるような気持ちだった。
原作者からそんなこと言われたら、歌う側はみんな落ちると思う。悪用禁止である。
責任をとっていただくことになる。
そして、数日後。
素晴らしい仕上がりの作品が僕の手元に届けられた。
本当にキラキラしていて、この世で一つしかない作品。これ以上の宝物はないと思った。
僕の歌コレの目標は決まった。
この宝物をたくさんの人に知ってもらいたい。
誰かに届くように。
自分の好きを発信して、繋がりをもっていけるように。
歌い手とは何かという問いに、今、答えるとするのなら。作品の想いや世界を通じて、自分の気持ちを歌で届ける人が「歌い手」なのかもしれない。
そして歌ってみたとは、歌という形でその想いを凝縮し放つ行為なのもしれない。
今回の歌コレでの僕の役目は、
作品を認知してもらうこと、そして原作の良さを歌を通して伝えることだ。
これが「ポストに合い鍵」を背負わせてもらった歌い手である。
そして、初めての歌コレを迎えた。
〜2章 〜
終
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〜3章 歌コレを終えて〜 に続く
📮章末小噺🔑
とにかくラーメンが淘汰されているらしいのでご当地のちょっといい感じのお土産ラーメンを送ってあげたいと思いました。